素材を訪ねる旅~鉄工~
JIA事業委員会の事業として、シリーズで「素材を訪ねる旅」を主催しています。
建築の素材の生まれる場所や造られる所を巡り、素材が建材としてのプロセスを見て
作り手のお話を伺うことで、素材の持つ特性をより適正な形で生かせる様、
また残したい素材を新しく活用出来るアイデアを出していくきっかけとなる
勉強会です。
今回シリーズ第5弾として、
鉄をテーマに「新日鉄製鉄所と亜鉛メッキ工場」を廻りました。
まずは新日鉄株式会社名古屋製鉄所へ、東海市の海に面した広大な敷地に
材料をオーストラリアや中国から輸入する船が直接停泊しています。
鉄鉱岩と石灰、石炭そして廃プラスチックをブレンドし1300℃の
高温で溶かします。
その高炉が数機並ぶ風景は、未来都市異次元に迷い込んだ様。
敷地内に15年使われて役目を終えた廃炉が展示しています。
内部は高温に耐える耐熱レンガが役目を終えて朽ち果てた姿が不気味だが
ヨーロッパの劇場遺跡の様でかっこいい!
熱延工場では、真っ赤な鉄の固まりが蒸気を上げてコンベアーに載って
圧力をかけながら0.23mmまでの薄板に延ばされていきます。
(工場内写真撮影禁止なので、残念でした。。。が)
ここでは一日に名古屋から東京まで往復出来る長さ、なんと700kmの
鉄板が生産されます。
製鉄に使われる水は名古屋市内で消費する約2倍の量が必要とのこと。
すべてがケタはずれ。工場内に火力発電があり、水の90%は工場内で
浄化して再利用とのことでしたが、環境への配慮の必然も痛感。
一日それだけの鉄の需要があることに驚き、移動の車中、高速道路での
風景を改めて見ると、道路はもちろん、柵、防音壁、照明器具、案内板等々、
街は鉄製品に溢れています。
午後は溶融亜鉛メッキの溝着け工場へ、
クレーンで吊られた鉄の加工品が次々と水槽に浸けられていきます。
最大15m×3 m×2 mもの大きさまでメッキすることが可能です。
メッキをすることで約30~50年の間、均一に防錆や防食性を
高める事が出来ます。
形状によって水槽に浸ける時間や引き上げるタイミング、角度など
均一にメッキする技法は熟練者の勘によるらしく、これだけの大きな
建材も職人技が必要なことを知りました。
高温でムラなくひずみなく納める為の注意点を伺い、設計者の技量
が問われることも痛感。
きれいにメッキされた商材がならびます。
鉄の生まれる場所や塗装技術など、今回はスケールの大きな研修
となりましたが、いくつかの注意点も確認できて有意義な時間でした。
いまだに、海沿いのあの高炉のシーンが焼き付いています。
製造する形が違っても、どうも福島の原子炉とかぶってしまいます。
地域住民や就業者への地震対策はどうなのでしょうか。そのことも気になりますね。
2012.01.30 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 建物・ショップ探訪
